『ガタカ』のアンドリュー・ニコル監督とイーサン・ホークが再びタッグを組んだ野心作
アメリカ国内の“戦地”と“家庭”を行き来する毎日――
戦場に赴かずしてPTSDに苦しめられる、ドローン操縦士の異常な日常。
二度の世界大戦、ベトナム、イラク、アフガニスタンなどの戦いを題材にした過去のハリウッドの戦争映画には苛烈な戦闘シーンがつきもので、『プラトーン』『プライベート・ライアン』『ブラックホーク・ダウン』『ハート・ロッカー』といったエポックメイキングな話題作がその名を映画史に刻み込んできた。ところが『ドローン・オブ・ウォー』には、臨場感みなぎるバトル・アクションも戦場に駆り出された兵士たちの決死のサバイバル描写も一切ない。一日の半分を空軍基地のオペレーションルームで費やし、残りの時間を家族と過ごす男の奇妙な二重生活を映し出す。毎日そうして非日常と日常を行き来する男の物語を通して、何の罪もない民間人を巻き添えにするドローン爆撃の恐ろしい実態と、戦場に赴かずしてPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられる操縦士の悪夢のような運命が描かれていくのだ。
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実際の軍事ドローンの運用状況を事実に基づいて映像化したアンドリュー・ニコル監督は、あえて劇的効果を狙った演出を避け、クールなリアリズムを徹底。操縦士の主人公とその相棒が上官の“攻撃許可”に従って爆撃を行い、モニター上でバラバラの死体を数えて“攻撃成果”を確認するプロセスを淡々と見せていく。ドローン爆撃につきまとう人道的な問題に加え、報復が報復を招く対テロ戦争の矛盾を鋭くえぐり出した語り口の緻密さは圧巻というほかはない。
主演は『ガタカ』『ロード・オブ・ウォー』でニコル監督との信頼関係を育んできたイーサン・ホーク。リチャード・リンクレイター監督と組んだ『ビフォア』シリーズ3部作などで活躍し、『6才のボクが、大人になるまで。』でアカデミー男優賞にノミネートされたことも記憶に新しい人気俳優が、職務上の使命感と複雑な現実の狭間で引き裂かれていく主人公の魂の彷徨を生々しく体現した。ミサイルの誘導を担当する副操縦士スアレスを演じるのは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で鮮烈なインパクトを残した新進女優ゾーイ・クラヴィッツ。さらに『13デイズ』『カポーティ』やJ・J・エイブラムス版『スター・トレック』シリーズのパイク提督役などで知られるブルース・グリーンウッド、TVシリーズ「MAD MEN マッドメン」や『アンノウン』のクラシカルな美人女優ジャニュアリー・ジョーンズが脇を固めている。
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