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STELLA CINEMA 〜映画館で個星に出会う〜

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特集09『心を動かし、映画館に足を運ばせる。それが予告編の役割です。』映画予告編制作会社「仕事主義」代表 / 相澤雅人

相澤雅人(あいざわ・まさと)プロフィール

1949年東京都生まれ。「東北新社」を経て、映画予告編制作会社の草分けでもある「ガル・エンタープライズ」に入社。1977年公開の角川映画『人間の証明』の特報を皮切りに、『地獄の黙示録』『戦場のメリークリスマス』『ラストエンペラー』等を手がけ、1989年に映画予告編制作会社「仕事主義」を設立。『ニュー・シネマ・パラダイス』『ロード・オブ・ザ・リング』『戦場のピアニスト』等、名作・話題作の予告編を多数生み出す。近年は神奈川県藤沢市辻堂と東京のオフィスにて制作監修を行う傍ら、CM等のナレーターとしても活躍中。

映画館のシートに身を沈め、本編が始まる前に目にするのが、次期上映作品や話題作の予告編。短い時間の中で作品の魅力や醍醐味を伝える「宣伝」であると同時に、よりインパクトのある表現で映画を物語る「作品」でもある。時には「本編よりも面白かった!」と、人々の記憶に長く残される予告編も多々存在するほど。そうした名作の数々を70年代より30年に渡り手がけ、“予告編業界の巨匠”として次世代クリエイター達に大きな影響を与え続けてきたのが、相澤雅人。2005年には自ら手がけた予告編作品をアーカイブスとしてまとめたDVD集『相澤雅人の仕事』を制作。その作品群には、映画の旨味を凝縮させ、時代を超えてインパクトを残し続けるための、彼の果てしない創造力が溢れている。今回の特集では、映画のヒットを生み出す影の仕掛人でもある予告編クリエイターの仕事に、フォーカスしてみました。

-- 映画の予告編にはどんな種類があるのですか?

相澤: 劇場用トレーラーには90秒〜2分近くのものまでありますが、TV用のCMでは15秒、30秒、60秒といったところですね。その他にも、公開3ヶ月前やクランクイン時に流す「特報」や公開後バージョンなど、公開作品に対して多種多様の予告編が作られます。最近ではデジタルメディアの普及で、インターネット等さまざまなシーンで観ることができますし、劇場公開が終わっても、その後店頭で発売されるDVDに特典映像として収められる場合が多い。僕がこの業界に入った時代から比べると、あらゆる面で大きく変わりましたね。

-- 映画の予告編が専門のプロダクションによって制作されているということは、あまり広く知られていないと思うのですが。

相澤: そうでしょうね。配給会社が作っていると思っている方も多いと思います。アメリカでは古くからそうした制作会社がたくさんありましたが、日本では現在でも20社程度しかないんじゃないかな。
それまで邦画に関していえば、撮影所の助監督が作っていたケースが多かったんですが、広告=プロモーションとしてより意識して、専門のプロダクションに予告編を作らせるというやり方は、角川映画の大ヒット作『人間の証明』の時が最初だったと思います。

-- 映画製作そのものがフィルムからフルデジタルの時代へと移行していく中、予告編のワークフローも大きく変わったのでは?

相澤: それはもう大きな変化でしたね。制作行程としては、まず配給会社の宣伝部と打ち合わせ後、本編の初号*を試写し、編集素材を構成してラフを作っていくわけですが、35ミリのフィルムが主流の時代は、本編のネガからラッシュ(未編集のフィルム)を焼いて、ビュワーという編集機を転がしながら編集していくという作業がたいへんでした。音も出ないから何もわからない状態ですし、それだけで1ヶ月ぐらいはかかっちゃう。『戦場のメリークリスマス』を手がけた頃も、まだフィルムです。ビデオの導入で飛躍的に便利になり、今ではかなりの部分でデジタルワーク中心になってきました。コンピュータでの作業が極めてスムースになったことで、制作時間も大きく短縮され、1〜3週間で仕上げる会社も多いとか!僕はもともと時間がかかることで有名なので、とてもそんな期間ではできませんが(笑)。


*初号:映画完成後、劇場上映するためにフィルムに焼いた一番最初のプリントを言う。

-- 予告では音楽が与えるインパクトも大きいですね。相澤さんもベースを演奏されるそうですが、音楽に対するこだわりは?

相澤: 僕自身は、スタッフとバンドを組んで映画音楽をボサノヴァ・アレンジで演奏したりする程度ですよ(笑)。ただ、予告編制作の仕事においては、どの音楽をどの場面でどう使うか、どういう処理ができるかなど、音楽的センスは非常に重要ですね。音楽的な感性のない人は向いていない、他の仕事をした方がいいとさえ思っています(笑)。サウンドトラックに限らず、さまざまな音楽を聴く・嗅ぎ分ける力は、特に今の時代には必須でしょう。予告編ではだいたい2〜3曲使うんですが、どう並べるかによって決まってしまうところもあるので。音楽から画をイメージできるという効果も大きいですね。その点も、音を聴くことのできなかったフィルム時代とは大きな違い。デジタル化の時代では、予告の主役と言ってもいいほど、相当な比重を占めてきていますね。

-- これまでに手がけられた中で、特に印象深い作品は?

相澤: 古くは『地獄の黙示録』ですね。作品自体が完成前からものすごく期待されていたこともあり、当時「テアトル東京」で予告が上映された際、最初にコッポラの顔が大写しになったとたん、客席から拍手が沸いたんです。それほど待ちこがれていた作品だったんですね。それほどの作品に関われたという嬉しさもありましたし、僕自身の仕事に対しても大きな転機となりました。それまでは、いわば質の悪い映画の予告であっても、映像テクニックを駆使して「さも面白そう」に仕上げるケースも多かったのですが、この映画は作品の素材そのものが素晴らしかったんです。それだけにギミックに頼らず、映画の持っている良さをそのままストレートに表現して素直に作れた。これがきっかけで、仕事に対する姿勢が大きく変わりました。いい映画は素直に見せようよ、と。

-- いい予告編は、やはりいい映画から生まれるということですね。

相澤: もちろんそうなんですが、予告編制作においては、むしろ映画の完成度よりも素材がいいかどうかがすごく重要。『恋する惑星』『ブエノスアイレス』のウォン・カーウァイ監督作品など、映像や音楽などの素材がいいと、本当に助かります。

-- 本編映画を大ヒットに導くコツは?

相澤: ないですね。いくら予告や宣伝を大々的にやっても、ダメなものはダメ。宣伝の量や予告編によって「これを見なきゃ乗り遅れちゃう!」というような社会現象を煽ることはできるかもしれませんが…。やはりその映画自体が持ってる魅力や生命みたいなものに左右されると思います。今の観客は、そういう部分をすぐに見抜いてしまうんじゃないかな。

-- 予告制作において、大切にしていることは?

相澤: うちの若いスタッフにいつも言っていることは、「必ず人間を描く」ということ。たとえ予告という短い時間の中でも、それが絶対的な命題だと思っています。どんなに技術的に巧く作っても、主人公や登場人物の人間が描けてなければ薄っぺらになってしまう。主人公のバックボーンや暮らしぶり、考え方、話し方すべて含めた人間性をきちっと突き詰めて描ければ、ふくらみのある予告が作れると思います。特にセンセーショナルだったり、セクシャルな表現が話題として先行している作品などの場合、そのまま描くと下品できわどさだけが売りになってしまいかねない。そこに文学的な味付けをすることで、ただのキワモノにしない配慮も大切ですね。

-- 劇場で観る予告編の醍醐味とは?

相澤: やはり、TVの15秒では語り尽くせないドラマを語ることができることですね。ただし、つまらない予告ほど退屈なことはない。「早く本編観せろ!」と僕だって思ってしまいます(笑)。予告は心を揺り動かす、感動させるためのもの。「なんだこれは!?」と気になったり、続きが観たくなるようなゾクゾクするものでなくては。関心を持たせることで「観に行こう」と次に繋がるわけですし、何かしら人の心を動かすものが広告ですから。僕たちの仕事は最終的に映画館に行かせることが目的、それに尽きると思います。

Q 最後に、相澤さんにとって「映画とは」? 
A 「めしの種」でもあるし、「こころの種」でもあると言えると思います。

僕にとって映画とはもちろんのこと「めしの種」です。
やっぱり予告というのは、映画が存在しなければ当然仕事として成り立たないものなんですね。予告を作ることで、生活というか、益を得てるわけですから、これはもう確実に「めしの種」であると言えます。
と同時に、「こころの種」とも言えます。映画を見ること触れることで、いろんな意味での刺激を受けるし、生き方みたいなことだって勉強するわけです。そういう意味では、「こころの種」として、映画が自分の中にあると思います。

Person's Topics

初めて予告編を手がけた作品は?
『人間の証明』(1977年)製作:角川春樹 監督:佐藤純彌 出演:岡田茉莉子、松田優作
もともとCMの制作会社に就職したんですが、3年ほどで辞めてしまい、たまたま新聞広告を見て予告編制作業界へ。東北新社からガル・エンタープライズに移り、入社後すぐに手がけたのが、角川映画の『人間の証明』。大学時代は放送研究会でラジオ・ドラマの演出をしたり、CM制作の経験はありましたが、映画の予告編はまったく初めての経験でした。

一番印象に残っている映画作品は?
『地獄の黙示録』(1979年)監督:フランシス・フォード・コッポラ 出演:マーロン・ブランド、マーチン・シーン
やっぱり『地獄の黙示録』(1979年)が、自分にとっては印象深い作品ですね。
特に映画青年というわけではありませんが、この業界では観ている方かもしれません。意外とみんな自分の関わった仕事以外は観ていないんじゃないかな。映画に限らず、絵や本などもっと文化的なことに多く触れる機会を持ち、知的な感性を磨いていくことも大切ですね。遊び心はいつの時代も大切にしてほしいと思います。

予告編制作以外のお仕事は?
初期のマスターカード“プライスレス”シリーズをはじめ、ここ数年ですがCMなどのナレーターもやっています。

仕事主義制作実績(抜粋)

王妃の紋章

2008年4月12日公開

予告編制作ポイント:
黄金の一族が破滅する様を、パワフルに壮絶に描いた。

フィクサー

2008年4月12日公開

予告編制作ポイント:
アカデミー賞ノミネート、ジョージ・クルーニーの存在感をいかに出すか。

ドラえもん のび太と緑の巨人伝

2008年3月8日公開

予告編制作ポイント:
キー坊とのび太の心の絆をいかに感動的に描くか。

エリザベス ゴールデン・エイジ

2008年2月17日公開

予告編制作ポイント:
スケール感、女王の苦悩、葛藤を描き、女性に受け入れやすい構成に。

インランド・エンパイア
[2007年]

パフューム ある人殺しの物語
[2007年]

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
[2007年]

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
[2007年]

手紙
[2006年]

グアンタナモ 僕達が見た真実
[2006年]

電車男
[2005年]

きみに読む物語
[2005年]

クイール
[2004年]

座頭市
[2003年]

永遠のマリア・カラス
[2003年]

シカゴ
[2002年]

ロード・オブ・ザ・リング
[2001年]

オータム・イン・ニューヨーク
[2000年]

グリーンマイル
[2000年]

エリザベス
[1999年]

L.A.コンフィデンシャル
[1998年]

シン・レッド・ライン
[1998年]

ブエノスアイレス
[1997年]

らせん
[1997年]

天使の涙
[1996年]

レオン
[1995年]

恋する惑星
[1995年]

パルプフィクション
[1994年]

さらばわが愛/覇王別姫
[1993年]

僕らはみんな生きている
[1993年]

欲望の翼
[1992年]

遠き落日
[1991年]

ニキータ
[1990年]

陽炎
[1990年]

ネバーエンディング・ストーリー 第2章
[1990年]

ニュー・シネマ・パラダイス
[1989年]

利休
[1989年]

バットマン
[1989年]

その男、凶暴につき
[1989年]

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