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FEATURE#18「日本のトレイル道を開く!」 石川 弘樹 / トレイルランナー

プロフィール

石川 弘樹(いしかわ ひろき)
1975年神奈川県生まれ。8歳よりサッカーを始め、高校でインターハイに出場。大学在学中にアドベンチャーレースと出会い、日本を代表する「Team EAST WIND」の一員として国際レースを転戦。2002年以降、最も好きなトレイルランニングにフィールドを移行し、アメリカを中心にレースを転戦。シリーズ戦やカップ戦に日本人初挑戦し入賞やタイトルを獲得。その経験と知識を生かし、アウトドア関連会社をはじめ、地元神奈川県でもアウトドア・フィットネスクラブ『BEACH』等と協力し、各地でトレイルランニングの普及活動を行っている。

イントロダクション

世界で最も過酷と言われるアドベンチャーレース「レイド・ゴロワーズ」。5人1組でチームを組み、人力のみで最長は1000キロにもおよぶ大自然の秘境を踏破していくノンストップレースで、ランニング、マウンテンバイク、カヌー、乗馬、クライミングなどの種目も組み込まれている。2000年春、石川はその第10回ヒマラヤ大会に初出場し、完走。以後プロチームのメンバーとして転戦を重ねて来た石川が、“わが道”として選んだのが、「トレイル・ランニング」だった。日本で初めて“トレイル・ランナー”と名乗り、その魅力をより広めようと、世界各地のレースを参戦しつつ、アウトドア関連メーカー等とのコラボレーション・イベントも積極的に展開。彼がまさしく自身の足で見つけた、新たなアウトドアアクティビティ・フィールドの魅力を紹介します。

※アドベンチャーレース
あらゆる大自然を舞台に、男女混成のチームでコースマップとコンパスを頼りに、人力のみで多様な種目をこなしながら前進し、人間の持つ能力の限界に挑戦する、知力・体力・精神力を競い合うレース。「Team EAST WIND」は、アドベンチャーレースの国内第一人者・田中正人氏が主宰する日本唯一のプロチーム。

※アウトドア アクティビティ
トレッキング、マウンテンバイク、乗馬、カヤック(海、川、湖)、ラフティング、キャニオニング(沢登り)、ケイビング(洞窟トレッキング)、インラインスケート、シュノーケリング等、動力を使用しないアウトドアスポーツ全般がレースの種目に含まれる。

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前編
後編
前編
自然に触れながら、山を走り抜ける楽しさを伝えたい!

アドベンチャー・レーサーとして活躍して来た経歴を脱ぎ捨て、ひとり山へと向かう歓びを感じながら、日々ひたすら走る。レースで競い合うよりも、「純粋に楽しみたい!」という思いが導いた、トレイル・ランナーへの道。

かつてのサッカー少年が抱いた、新たな夢。

幼少の頃から、プロのサッカー選手を一心にめざして来た石川。大学入学後、さまざまなアウトドアスポーツの集大成としてのアドベンチャーレースと出会ったことで、その夢は大きく動いた。
「最初はどうやって始めたらいいのか何もわからなかった。アドベンチャーレースに出るためにはまずチームに入る必要があるんですが、当時の日本には大会もなく、チームもひとつだけ。その中に入れてもらうには、他の人に絶対に負けないものを持たねばと思った時、自分が選んだのが“走ること”でした。見よう見まねで山を走ったり、自己流でしたけどけっこう力にはなっていたんですね。山岳マラソンの大会で優勝できたことがきっかけで、チームの方から誘いをもらえました。レースに出ることが夢の頂点だったので、初めてヒマラヤの大会に出場し、秘境を踏破した時は、“これがやりたかったんだよ!”と最高の満足感を味わいましたね」。

人間の極限が試される過酷なレースの果てに。

ロングトライアスロンをはじめとする数多くの耐久レースの中でも、チームの結束力が最も必要とされ、人力の極限に挑むという究極のレースに身を投じた石川。他では得られない大きな感動もあれば、人としての本性が剥き出しにされるシビアな場面も多かったと言う。
「極限に追い込まれると、だれもが自分のことしか見えなくなってくるものなんですね。手持ちの食料が限られてくると、それこそビーフジャーキーひとつでケンカになるくらい(笑)。チーム内のイヤな部分も見えてくるので、レースの途中で分裂、失格になるチームもめずらしくない。僕自身も、チーム競技ならではの難しさやストレスに加え、プロとして常に闘い続けなくてはという義務的な感覚が強まってきて…しだいに心から楽しめるものではなくなっていった。競技としてしか楽しめないことも、チームを離れた理由のひとつですね」。

もともと大好きだったトレイル・ランニングの世界へ。

プロと言っても日本ではまだまだマイナーなスポーツだけに、生活費や遠征にかかる費用のほとんどは自分持ち。年間に数週間も費やす海外レースに出場するため、仕事もパートタイムしか選べない。チームを離れ、一時は就職も考えたと言う。そんな中、再び彼の日々に輝きをもたらしたのが、日常的なトレイル・ランニングの存在だった。
「休みの日に何をして遊びたいかというと、僕の場合はやっぱり走ることだったんです。特に山を走るのがいちばん好きだったので、トレイル・ランニングの世界をもっと見てみたい、勉強したい、レースに出たいと自然に思うようになっていきました。チーム競技とは違って、自分の好きなペースでできるし、速さを競い合う以外に自然の魅力や楽しみ方など、よりいろいろなものが見えてくるんです。1人で走っているうちに、“闘わなければいけない!”から、再び“闘いたい”という気持ちに変わり、レースに対しても新たな感覚が開かれました」。

ひとりひとり自由に楽しめることが、いちばんの魅力!

体育の授業で強制的に走らされたり、速く走らねばと無理をするなど、つらいイメージをが先行しがちなランニング。石川は、そうした先入観をトレイルを走ることで少しでも払拭できればと、スポンサー企業やショップ等と連携してさまざまな普及イベントに積極的に関わっている。
「レースでなかったら別に速く走る必要なんてないんだし、早歩きの延長のようなペースで走っても全然かまわない。日本だと山=登るものと思われていますが、なだらかな稜線など横に歩ける部分もたくさんあります。山は自然の変化を常に見せてくれるので、街中の同じルートを走っているより、ずっとハプニングや刺激があって楽しい。ハイキングのようにガイドブックを手にして、どの山のどの道を走るかを選んだり、探しにいく楽しみもあります。走る=エクササイズではなく、遊び感覚に富んでいるのがトレイル・ランの魅力ですね」。

鎌倉の山を走り、海で波乗りを楽しむ生活。

古い寺院や仏像など、日本の伝統文化が息づく古都・鎌倉。海と山に囲まれ、家を一歩出ればどこでもトレーニングのできる環境に石川は日々暮らす。時にはサーフィンでリラックスし、アウトドア仲間とともにダッチオーブン料理の腕をふるったりもする。
「鎌倉に住み始めて5年くらい。鎌倉の山は、長い登りでもそれほどキツくなくずっと走っていられるので、走力もつき易いし、トレーニングには絶好の環境なんです。北米を拠点に活動してみたいという夢はあるけど、まだまだ日本でやらなくてはならないことがあるし、今年からは活動の場をヨーロッパやオセアニア、アジアへも広げていこうと思うんです。5月にはヒマラヤのレースに出る予定。5,500mのエベレストのベースキャンプに2週間かけて登って、1日数時間かけて下りてくる。楽しそうでしょ?(笑)スキーと同じ感覚で楽しめるので、下りは大好きなんです!」

トレーニング方法もレース活動も、すべてが自然体のフリースタイル。彼のポジティブなスタンスには、ハードなスポーツに対する敷居もなだらかなスロープに感じさせてくれる力があふれている。後編では、究極を知る男だからこそ出会えた感動秘話やギアアイテムについてインタビューで紹介します。

前編
後編

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