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FEATURE#19「ドラマが息づく“風景”を撮る。」 西山 和明 / スポーツ・フォトグラファー

プロフィール

西山 和明(にしやま かずあき)
長野県生まれ。1977年法政大学卒業。広告制作会社を経て、1984年よりフリーのカメラマンとなる。1986年からスポーツを撮り始め、1992年よりスポーツ誌『Sports Graphic Number』の専属カメラマンに、2004年スポーツ誌『VS. 』創刊時よりチーフカメラマン及びフォト・ディレクターに就任。過去3回のオリンピック、サッカーW杯を経験、現在フリーで野球、サッカーを中心に『Sportiva』などに作品を掲載。世界中のスポーツシーンを取材し、これまで訪れた国の数は約50カ国。日本スポーツカメラマン界の重鎮。詳しいプロフィールはこちら。

イントロダクション

拮抗するゲームに漲る緊張感、激しく競り合うプレイヤー達の熱気、勝利の、あるいは敗北の瞬間。真剣勝負に挑むアスリートの勇姿や観客の熱狂を、その現場でファインダーに収めるスポーツ専門のカメラマンがいる。彼らの存在があるからこそ、私達は感動の瞬間を再びより鮮やかに享受することができる。西山和明の作品を見れば、「あ!」と多くの人々がいくつかの名場面ショットや選手のポートレイトを思い浮かべるはず。それほど彼の写真には、一目で鮮烈な印象を焼き付ける独特の吸引力がある。この夏はいよいよ北京オリンピックも開催。アトランタ、長野、シドニーも経験し、世界のアスリートの素顔を知る彼の貴重な仕事に触れつつ、その時々の舞台裏エピソードやスポーツ写真を撮る面白さについて、フォーカス・インタビュー。

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前編
後編
前編
高度な機材の性能以上に、スポーツカメラマンに必要なもの。

カメラのデジタル化・高機能化によって「今や機材次第」とも言われるスポーツ写真の世界。だが、瞬間を単に偶然の連続でとらえるだけではなく、独自の視点と感性がなければ、人を感動させる写真は生まれてこない。その瞬間を捉えるに至るストーリーや背景をも写し込む、独自の視点と感性に触れる。

アメリカに渡り、
世界のトップ・アスリートたちを撮影。

広告の仕事の中でカメラを手にし始めたことがきっかけで、雑誌のグラビア撮影等も手掛けて来た西山。スポーツ専門のカメラマンを志す決心をした後、自費でアメリカへ。1シーズン半の滞在中は、自分の撮りたい写真を撮り続けた。
「メジャーリーグ、バスケット、アメリカン・フットボールなど、とにかくありとあらゆるスポーツシーンを撮りましたね。ちょうどNBAでマイケル・ジョーダンとマジックジョンソンが大活躍していた頃だったし、楽しかったですよ。1年半が過ぎた頃、文藝春秋社の『Sports Graphic Number』の専属オファーをいただいたので帰国しました。何と言ってもこの仕事は、世界のトップ・アスリートを観客よりもずっと間近で見られるという楽しさがありますね。グラビア撮影ほど収入がいいわけでもなかったのに、仕事としてイヤだと思ったことはありませんでした」。

“その瞬間”と出会うためのわずかな確率とは。

アスリートに一番近い位置で撮影できる特権。だが、だれもがそこに立てるわけではない。メジャーリーグの場合、撮影許可が下りるのは基本的に1社1名のみという門の狭さ。オリンピックやW杯にしても、その数は限られている。
「僕の場合はたまたまラッキーだっただけ。でも、ラッキーかどうかというのは、この仕事においてはとても大きいんですよ。たとえいい場面があったとしてもその場に自分がいなければ撮れないわけだし、仮に撮影できたとしても、その選手の絶好の瞬間にピントが合っているかどうかはわからない。出会う確率とそれをきっちりと写真に収めることのできる確率はかなり低い。でも、デジタルやAFなど機材性能が進化したことで、その確率も格段にアップしました。スポーツ写真の場合特に、今は最新の良い機材を持っているやつが勝ちという時代。だから歳を取っても僕らが現役でいられるわけです(笑)」。

動き回る被写体を捉える、独自の映画的手法。

“動いているものを撮る”ということに関しては、3年前の機材を使っているベテランよりも、最新の機材を持った新人の方が強いと西山は言う。だが、やはりそれだけで“人の心を動かす写真”を撮ることはできないはず。 「どこで何を撮るか、特集の起承転結をいかに作るかとなると、話は別ですね。動いているものを撮ることだけがスポーツ写真ではない。その選手のどんな表情や瞬間を撮るかではなく、その選手にどういうバックグラウンドがあって、どういう画を撮ったらこの選手らしくなるかということを考えて撮っています。撮り方も他の人と少し違っていて、普通はテレビカメラのように被写体を追っていくんですが、僕はカメラで追うのではなく、最初にフレームに収める景色や位置を決めておいて、そこに入って来るものを撮る。どちらかというと、黒澤作品のような映画に近い撮り方をしています」。

ファインダーを通して体験した、感動的瞬間。

撮影しながら実際に現場で感動することは、実はそんなに多くはない。劇的なゲームなど、1年に2回も出会えればいいぐらいだという。
「闘っている選手と違い、こちらは仕事として冷静に撮っているわけですし、自分の感情が思わず出てしまうような瞬間なんて、めったにないものですよ。でも、そんな中でも野茂投手が初めてメジャーリーグのマウンドに上がった時には、感動しちゃって涙が止まらなかった。渡米していた当時、メジャーのゲームを撮りに行っても周りにまだ日本人が少なく、僕ひとりだった。その時から、“いつかこのマウンドに日本人のピッチャーが上がらないかな”ってずっと思っていただけに、感動しましたね。あとは『Sports Graphic Number』でゴン中山選手が表紙になった、サッカーW杯フランス大会出場を決めた瞬間や、パイレーツに入団した桑田投手が、1度だけ9回を投げ切った時ぐらいかな」。

その街に息づくスタジアムの風景がいちばん好き。

西山の作品には、メインとなる被写体の存在感だけでなく、それを取り巻く周りの風景や、スタジアムのある街の雰囲気を感じ取れる写真が多い。
「僕の写真はある意味“スポーツの風景写真”、それが特徴だと思うんです。とにかく、スタジアムの雰囲気が好き。スタジアム・フェチなんですよ(笑)。街と野球場がなんとなく自然に一体化している雰囲気がいい。世界中のスタジアムに行くたび、ワクワクします。特に好きなのはブラジルのサントスにあるヴィラ・ベルミーロ・スタジアムというサッカー場。古いけど石畳が敷いてあって、バックスタンドが壁みたいな急斜面になっているのがとても印象的。NYのヤンキーススタジアムも、今季を最後に移転してしまうので、去年の4月に広報の人に案内してもらって、裏の部分まですべて撮らせてもらいました。そんな趣味が、撮りたい写真とも関係していますね」。

フィールドを駆け回るプレイヤーたちの背後に、その国のその街の景色がひとつになって写っている。目の前で白熱するスポーツ現場の世界のみではなく、そのスポーツが人々の生活の中で息づいて来たバックグラウンドも、西山にとっての「スポーツフォトグラフィ」の魅力であり、心象でもある。後編のインタビューでは、そんな彼の目線の先を、もう少し深くズームアップして覗いてみたい。

前編
後編

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