---ベビーカーは年齢や用途によって使う種類も異なるし、メーカーによって打ち出す特色も実にさまざまですね。
鈴木:そうですね。『hugme』は、A型(首のすわっていない新生児でも使用できるベッド型のベビーカー)としても、B型(お座りのできる7ヶ月以降から使用することのできるベビーカー)としても使用できるベビーカーなんですが、軽量が主流とされている中で14.5kgという車体重量は、逆に目立ちますよね(笑)。
しかし『hugme』の重量が重い、大きいなどのマイナス面は、安全性や丈夫さ、子供の乗り心地を考えた上でがっしりとした作りになっているため、子供にとってはプラスの要因になっていますね。
これを手掛ける前は、3kg以下という超軽量機種『かるいdeちゅ』も手掛けていますから、両極端なコンセプトのベビーカーをデザインしたことになります。
---これまで手掛けられてきた仕事と『hugme』プロジェクトとのいちばん大きな違いは?
鈴木:ただ商品のデザインをするだけでなく、市場のリサーチから始まり、販売方法や広告展開まで含めた新しいブランドづくり全体に関わる仕事になったことですね。代官山にアンテナショップをオープンしたことで、実際に使う人の感想や意見、ニーズなど生の声をダイレクトに聞くことができるので、よりリアルに商品にフィードバックできる。商品のラインごとにそれぞれニーズはありますが、いちばん重要なのは、やはり使う人の気持ちやシチュエーションを考えてデザインすることですから、とても勉強になるし、手応えを感じますね。
---ニッチなマーケットで勝負していくということは、それだけ個性づくりもシビアになっていきますよね?デザインする上で、どんなことがヒントや参考になりますか?
鈴木:ひとりひとりに個性があるし、感性が違っているものですから、使う人の気持ち、楽しくさせることを絶対忘れないようにしています。自分自身がまず使いたいと思えるかどうか、が大切な基準ですね。『hugme』も実際に自分で乗ってみたのですが、意外に乗り心地が良くって(笑)。基本的な機能コンセプトに、自分なりの視点で考えたプラスαのこだわりや配慮を提案しています。
ベビーカーだからといって、自分のファッションやセンスに合わないダサいものを使いたくはないじゃないですか(笑)。むしろベビー用品にまったく関係のないものに目を向け、カッコ良いと思ったら色でも素材でも何でも良いから自分の引き出しに入れておく。自分の生活のすべてがアイデアのもとになっています。